2009年 08月 02日
鉄魚の森 鉄魚の沼 2009/07/31~08/01 |
鉄魚の聖地 魚 取 沼
山形県尾花沢市から続く母袋街道は
宮城県入りして中羽前街道に名前を変え
鳴瀬川に沿って加美町に通じる。
魚取沼
は
県境から宮城入りした奥深い山の中にあり
街道から林道を辿っておよそ徒歩3時間の位置らしい
庄内から向かうくいくい号スペシャルの走りは快調
調子の悪いナビも
今回の旅に限り最後の力を振り絞るように林道入り口を指す
そうか、行けるのか、ついに・・・
思い起こせば
初めて魚取沼に夢を馳せたのは
今よりはるかに純粋な学生服のころだった・・・
いつか行きたい
おれも行きたい
夢というのには気恥ずかしいけど
ついに叶う
街道沿いで車中泊、翌早朝から林道入りしよう
夜半はまたもや雨・・・
しっかり降ったみたいだが明るくなるころには霧雨に
これなら2、3時間もすれば上がるはず
迎える朝、雨はほとんど気にならないくいらい・・・
しかし、雨滴を含んだ藪は雨の中を歩くのと同じで
ほどなくびしょぬれ状態に・・・
おまけに
アブの大群
小奴ら、忍者のように忍び足で肌に着いたと思ったら
すかさず吸血
長袖を忘れてしまったので
タオルを振り回し振り回しの行軍。
ちなみに、この血吸いアブ
つなぎ
と呼ばれるらしい
テロリストのようなおそろしい名前だ
新潟あたりでは
ぶと
と呼ばれているけど
つなぎに比べればかわいいもの
終わりのない梅雨とバトンタッチした前夜の大雨
林道は水路と化し
しっかりオタマジャクシが沸いている
長靴は日ごろから持参しているけど
げっ、穴があいてるみたい!
じわじわと浸透する冷たさ・・・
今思えば
これら、すべて出足が悪かった。
藪漕ぎ(藪の中を進む)がわかっていて長袖を忘れたのはまだ良し
長靴が水浸しなのも致し方なし
しかし
つなぎの襲来は予想外
5匹、6匹・・・10匹
不気味な羽音をさせておいて音もなく肌に貼り付き
気がついた時にはしっかり吸血されている
強烈なかゆみと腫れは蚊など及ばないところ
振り落とそうなんてのは無理
離れません
致命傷になるくらいひっぱたかないとダメ
彼らも命がけなんだから
林道入り早々のストレスに
旅の疲れも重なってかなり冷静さを失ってしまった
林道を3時間が正式な情報
だけど
出発直前
林道1時間で左に曲がる・・・なんて話も聞いていたもんだから
ちょうど1時間歩いたところに標識を見つけ
そして
渡渉して左へ・・・
これが大いなる間違いでありまして
今にして思えば
地形図と全く違う急登、つまり尾根を登ることに
おかしいとは思っていたのだけど
久しぶりの山歩きに楽しい気分もあった・・・というのは自己弁護で
つなぎ との交戦に正直ヘトヘト状態の中
林道から尾根に入ってつなぎの姿がなくなったこともあり
安きに流れひたすら進んでしまったのだ
で、辿りついたのは尾根頂上にそびえる送電塔
雨も上がり
さわやかな風とユリの花が美しい場所ではありましたが・・・
尾根を下り再び林道を進むには時間と体力を無駄にし過ぎた
で、この時点でこの日の行程は断念・・・
つなぎ の吸血に腫れあがった患部
まずは薬屋に行って薬と虫よけスプレーを買おう
それからホームセンターへ行って長袖と長靴を手に入れ
コインランドリーを探して洗濯しよう
そして、何よりも何か喰おう
このままでは帰れない
翌日からは宮崎鉄魚愛好会さんへの取材予定ではあったけど
少し時間をずらしてもらえれば
午前中に往復してなんとか間に合う・・・
ネガティブな気持ちを鼓舞させ
予定変更のご無理を聞いてもらい
再挑戦することに
街道を下り街並みに入ると
薬屋、ホームセンター、コインランドリーと計画通り
腹ごしらえをして日帰り温泉で汗を流し
ちょっぴり悔しい気持ちを宥めつつ
やはり魚取の森に少しでも近い場所で車中泊
夜半はまたも雨音
雨が降っても行くんだ
・・・と思えば
旅の疲れが眠気を誘い魚取の夜に溶け込んだ
翌朝の空気は湿気を帯びて重く、不安定さは相変わらず
雲は低く流れ、藪は雨滴を含んでいる
大丈夫、晴れるさ
晴れ男の意地で気合を入れ林道へ
長袖と防虫スプレーの効果でつなぎの攻撃は回避できた
あとは熊だな
ホームセンターで手に入れてきた棒杭を杖代わり
なんとか引き分けくらいの勝負はできるだろう
往復6時間
昼までに戻らなければ午後からの約束に間に合わない
兎にも角にも進むしかない
林道は昨日と同じく水路のよう
オタマジャクシを求めてジムグリの幼蛇が顔を出す
珍しくはない蛇だけどこれほどのチビサイズは初めて
思わず拾いたくなったけど・・・先に進もう
通称ヤマナメクジ・・・親指ほどありますがこれでも小さい方
進むうち陽射しが戻ってきた
奥深く進み、振り返れば
昨日迷い込んだ送電塔の尾根が見える
なんであんなところ登ったのか・・・
林道は完全に藪と化す
ほとんど整備されていない
しかし 聖地を守るにはこの方がいい
前日迷ったくせに洒落くさいけど
ルートファインディングの知識がないと遭難まではしなくとも行きつけいないかも
足元のちょっとした緑や陽射しに誘われた虫たちが
疲れた体を和ませる
奇妙なハナアブ
そして、ついに
思いを馳せた
魚 取 沼
ふぅ~
ここかぁ、魚取沼は・・・
魚影はもちろん、鉄魚の姿などは確認できないけど
ときおり もじりが見え
沼の生命力を実感させる
やっと来られた・・・
よくやったよ、そして よかったね
40年以上
湖畔で保護地であることを明示する旧中新田営林署の看板
ボコボコのクシャクシャだけど・・・
おつかれさまです
苦楽を共にした対熊戦用の杖と記念撮影
湖畔入り口の木肌には
「大正・・・」と傷文字が・・・
皇族に鉄魚が献上される以前に調査が入った痕跡でしょうか
残念ながら
ゆっくりと地調べを行う時間がなく
古い仲間に見送られるような思いで魚取沼を後に・・・
ムツ氏(作家・畑正憲)が調査に入ったのはおよそ40年前
槍のように泳ぐ鉄色、緋色の鉄魚たち
しかし
いずれは葦群により沼自体が消滅するだろうという印象を持ったそうですが
悠久の森の中で
鉄魚の聖地魚取沼は
今も静かに、そして累々と水をたたえていたのでありました
魚取沼が
荒らされることなく
末永く
鉄魚の聖地
であることを願って
100924
by tamakin-ojisan
| 2009-08-02 11:00
| 鉄 魚